社長から「若い社員に出てもらえ」と言われて。でも本人に聞いたら、あまり乗り気じゃなさそうで……。

上司に頼まれたら、嫌でも「いいですよ」って言っちゃいますよね。そこを前提に考えたいんです。
ショート動画を始めると、誰が画面に出るかという問題に必ずぶつかります。社長が出るのか、現場のスタッフが出るのか。お店や会社の雰囲気を伝えるなら、実際に働いている人が出るのがいちばん早い、というのはその通りです。
ただ、社員の出演は、外部のモデルに頼むのとは事情が違います。出る本人と頼む会社の間に上下の関係があり、本人は動画が公開されたあとも、その会社で働き続けます。辞めたあとも、動画はネットに残ります。
この記事では、社員に出てもらう前に決めておくことを、同意の取り方、辞めるときの扱い、出演する人の負担の3つに分けて書きます。採用のための動画をどう企画するかは、ここでは扱いません。
この記事の要点
- 社員の「いいですよ」は、断れないから出ている場合がある
- 同意は「どこに・どこまで・いつまで」を書面に残す
- 辞めるときの扱いと、コメントへの対応は会社が先に決める
社員の「いいですよ」を、そのまま信じない
社員に出演をお願いすると、多くの人は引き受けてくれます。ただ、それが本心かどうかは分かりません。断ったら評価に響くのでは、職場の空気が悪くなるのでは、と考えて首を縦に振っている人もいます。
そこで、お願いの仕方を変えます。まず、断っても不利にならないことを、頼む側からはっきり言います。そのうえで、「出るか出ないか」の二択ではなく、出方を選べるようにします。
| 出方 | 画面に出るもの | 向いている内容 |
|---|---|---|
| 手元・後ろ姿だけ | 手、作業の様子 | 調理、施術、修理などの工程 |
| 声だけ | 声、話し方 | 説明、質問への答え |
| 顔あり・名前なし | 顔、声 | 店の雰囲気、日常の様子 |
| 顔と下の名前 | 顔、声、呼び名 | 担当者として覚えてもらう内容 |
例えば、駅前の整骨院なら「施術の手元だけなら出られる」というスタッフは少なくありません。顔を出すのは院長だけ、ほかのスタッフは手元と声、と分けても、動画は十分に成り立ちます。顔を出さずに続ける型は、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい顔出しなしでショート動画を続ける方法。顔を出さない企画の型と注意点もう一つ、選んだ出方は途中で変えてよいことも伝えておきます。最初は顔ありでよかった人が、数か月後に「やっぱり手元だけに」と言ってくることもあります。そのとき言い出しやすいかどうかで、続けられるかが決まります。
同意は「どこに・どこまで・いつまで」を紙に残す
口頭で「出てもいいですよ」と聞いただけでは、あとで食い違います。本人は自社のInstagramに出るつもりだったのに、広告やチラシにも使われていた。よくあるのは、この形のずれです。
人がみだりに自分の容ぼうを撮影されたり公表されたりしない利益は、法律の条文にはないものの、裁判例で認められてきました(いわゆる肖像権)。また個人情報保護委員会のガイドラインでは、本人が判別できる映像は個人情報の例として挙げられています。社員であっても、顔や声が出る動画は本人の情報として扱うのが前提です。
書面には、次のことを入れておきます。
- 使う場所:自社のSNS、サイト、広告、店頭のモニター、印刷物のどれに使うか
- 出方:顔・声・名前のどこまで出すか
- 期間:いつまで使うか。決めないなら「見直す時期」を書く
- 広告への使用:広告として配信するかどうかは、ほかとは分けて聞く
- 辞めるときの扱い:下で書く3つのどれにするか
- 取り下げの窓口:「やっぱり外してほしい」と言うときの相手
入社時の書類にまとめて入れておくやり方は、避けたほうが無難です。入社の時点では、どんな動画に出るのか本人には分かりません。動画の企画が決まった段階で、その中身を見せて聞きます。

書面は「何に使うか」を見せてから、お願いしてください。白紙に近い同意は、あとで揉める元なんですよ。
辞めるときに困らないよう、先に決めておく
社員が出る動画で、いちばん後回しにされやすいのが退職時の扱いです。辞めることが決まってから話し合うと、お互いに言いにくくなります。出演をお願いする時点で、次のどれにするかを決めておきます。
| 退職時の扱い | 内容 | 向いている動画 |
|---|---|---|
| すぐ非公開にする | 退職日までに、出ている動画を見えなくする | その人が主役の動画 |
| 新しく使わない | 公開済みの動画は残すが、広告や再編集には使わない | 複数人が出ている動画 |
| 本人と相談する | 退職が決まった時点で、1本ずつ決める | 出演本数が多い人 |
これを回すには、どの動画に誰が出ているかの一覧が要ります。投稿日、動画の題、出ている人、使っている場所(SNS・サイト・広告)を1行ずつ書いておけば、退職が決まった日に、どれを止めるかすぐに分かります。
辞めた人の動画が残っていると、コメント欄に「この人もう辞めましたよね」と書かれることもあります。お客さんが、その人に会いに来店してしまうこともあります。担当者として名前を出していた人ほど、早めに扱いを決めておきます。

辞めた後も、お店の顔として動画に出続けている。本人にも、来てくれたお客さんにも、つらいんですよね。
退職する社員が会社のアカウントの管理に関わっていた場合は、ログインの権限も外します。権限の管理は、同時期に書いている別の記事で扱います。
あわせて読みたいSNS乗っ取り対策。会社のアカウントを守る二段階認証・権限・退職時の手順出演する人の負担を、本人ひとりに寄せない
同意を取ったら終わり、ではありません。出演が続くと、本人にはいくつかの負担がかかります。
1つ目は時間です。撮影は本業の合間に入りがちで、出演する人の仕事が後ろにずれます。撮影は勤務時間の中に予定として組み、その時間の本業をどうするかを先に決めておきます。
2つ目は、コメントやDMです。容姿へのからかい、私生活についての質問、個人的な誘い。こうしたものに本人が一人で向き合わずに済むよう、コメントを見て対応するのは担当者の仕事だと決めておきます。本人には、気になるコメントを見つけたら返さずに担当者へ知らせる、とだけ伝えておけば足ります。
3つ目は、一人に頼りすぎることです。「あの子が出ると伸びる」と、同じ人ばかりに出演が集まると、休みにくくなり、辞めるときの影響も大きくなります。顔の出る回と手元だけの回を混ぜる、出る人を2〜3人で回すなど、一人で背負わない形にしておきます。
もう一つ、社員の個人アカウントを、会社の動画に紐づけないことも決めておくと安心です。動画から個人のアカウントをたどれる状態だと、本人の私生活まで見られることになります。

出てくれる人を守るのは、会社の役目です。そこを約束してから、お願いしてみてください。
社員が出る動画を、無理なく続けるために
HEART CREATIONでは、社員の方が出演する動画を、企画から撮影・編集・運用まで同じチームでお手伝いしています(サービス一覧)。
- 出演する人ごとに、出方(手元・声・顔)を選べる企画づくり
- 撮影の時間を本業から大きく外さない、撮影日の組み方
- コメントの対応を担当側で引き受ける、運用の決まりづくり
「出てくれる社員がいない」「本人が乗り気でない」という段階のご相談で構いません。初回のご相談は無料で、オンライン60分でも承ります(ご相談はこちら)。

顔を出さない回から、まず1本作ってみるのもありですよ。
よくある質問
社員に動画へ出てもらうとき、同意書は必要ですか?
口頭でも同意そのものは成り立ちますが、あとで「そこまでとは聞いていない」と食い違いやすくなります。使う場所・出方・期間・退職時の扱いを書いた書面を残しておくと、お互いに安心です。
パートやアルバイトのスタッフにも、同じように同意を取りますか?
雇用の形にかかわらず、同じように取ります。働く期間が短い人ほど辞める時期も早く来るので、退職時の扱いは特に先に決めておきます。
退職した社員から「動画を消してほしい」と言われたら?
まず、出演をお願いしたときの書面で決めた扱いを確かめます。決めていなかった場合も、本人の意向を聞いて、非公開にするか、少なくとも新しく使うのは止めるのが穏当です。対応の判断に迷うときは専門家に相談します。
社員を広告の動画にも使っていいですか?
自社のアカウントへの投稿とは別に、広告に使うことへの同意を取ってから使います。広告は配信される範囲も期間も広がるため、本人が思っていた使われ方と離れやすいところです。
社員の家族や子どもが動画に映り込んだら、どうしますか?
出演をお願いしていない人は、写さない、または分からない形に編集するのが基本です。撮影の場所や時間帯を選んで、そもそも映り込まないように組んでおくと手間が減ります。
