院のインスタで、患者さんの「よかった」という声を動画にしたいんです。喜んでくれている方も多くて。

その気持ち、すごく分かります。ただ、医療の広告では患者さんの体験談そのものが出せないんですよ。
クリニックや歯科医院がSNSを始めるとき、ほかの業種と同じ感覚で企画を立てると、気づかないうちに医療広告のルールにかかることがあります。患者さんの感想、施術前後の写真、「地域でいちばん」という言い方、期間限定の割引。どれも一般の店なら当たり前の見せ方ですが、医療機関では出せないか、条件つきになるものです。
医療機関の広告は、医療法と、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」で決められています。そして、SNSのアカウントや動画も、その対象に入ります。
この記事では、厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版、令和7年3月)」をもとに、SNSのどこまでが広告に当たるか、動画で引っかかりやすい表現、自由診療を伝えるときの条件、出す前の確かめ方を整理します。
この記事の要点
- SNSのプロフィール・投稿・返信、動画の音声やテロップも広告に入る
- 患者の体験談は出せない。ビフォーアフターは詳しい説明が要る
- 自由診療は、内容・費用・リスクを投稿の近くにまとめて書く
SNSの投稿も「医療広告」になる
平成29年の医療法の改正(平成30年6月1日施行)で、規制の対象は「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」に広がり、ウェブサイトも含まれるようになりました。
医療広告ガイドラインでは、次の2つを両方満たすものを医療広告として扱います。
- 患者の受診などを誘う意図がある(誘引性)
- 医療機関や医師の名前が特定できる(特定性)
クリニックの公式アカウントは、ほぼこの2つを満たします。事例解説書では、SNSならプロフィール・投稿・返信のどれか、動画ならプロフィール・動画・タイトル・概要欄のどれかに禁止された表現があれば違反になると整理されています。動画の中の音声やテロップ、ハッシュタグも含まれます。医師の個人アカウントでも、誘引性と特定性の両方があれば対象です。

院長の個人アカウントだから大丈夫、と思っている方は意外と多いんです。そこも見られますよ。
動画で引っかかりやすい表現
ショート動画で特に起きやすいのは、次の4つです。
| 表現 | 扱い | 動画で起きやすい場面 |
|---|---|---|
| 患者の体験談 | 治療の内容や効果についての主観的な体験談は禁止 | 患者インタビュー、感想の読み上げ、患者の投稿の引用 |
| ビフォーアフター写真 | 治療内容・費用・主なリスクや副作用の詳しい説明がなければ禁止 | 施術前後を並べる動画 |
| 比べて優れているという表現 | 比較優良広告として禁止 | 「地域No.1」、他院との比較、有名人が来院した話 |
| 費用の強調、医療と関係ない特典 | 品位を損ねる、不当に誘う広告として注意が必要 | 割引キャンペーン、来院で品物を配る告知 |
体験談は、患者本人が話す動画だけでなく、スタッフが患者の体験を代わりに語るものや、患者がSNSに書いた感想を引用して紹介するものも違反の例として挙げられています。施術前後の写真を加工・修正して載せれば、虚偽広告になります。
ビフォーアフターの説明は、写真の近くにまとめて書く必要があります。「詳しくはホームページで」と別のページに送るだけでは足りない、というのが事例解説書の整理です。
インフルエンサーに来院してもらって発信を頼むときは、ステルスマーケティングの規制もかかります。
あわせて読みたいステマ規制とPR表記の書き方。広告主が押さえる線引きと表示の位置自由診療を伝えるときの条件
保険がきかない自由診療は、もともと広告できる事項に入っていないため、原則として広告できません。ただし、ウェブサイトのように患者が自分で調べに来る場で、次の条件をそろえれば、広告できる範囲が広がります(限定解除)。
- 問い合わせ先を書く
- 通常必要とされる治療の内容と費用を書く
- 治療の主なリスクと副作用を書く
SNSや動画では、この情報を一体的に、一覧できる形で出すことが求められます。例えば、動画の中で治療の内容・費用・リスクをまとめて見せる、あるいは動画の中で「詳しくは概要欄に」と示して、概要欄にまとめて書く、という形です。プロフィールに「1つ目の投稿を固定しています」と書き、その投稿にまとめる例も示されています。
注意したいのは、広告枠に出す場合です。事例解説書では、バナー広告やリスティング広告は「患者が自ら求めて入手する情報」に当たらず、限定解除ができないとされています。広告として配信する動画は、通常の投稿とは別に考えます。

昔の投稿にビフォーアフターだけ載っていたら、まずはそこから直しに走ってください。
出せること、出す前に確かめること
ルールが多いからといって、医療機関のSNSが何も出せないわけではありません。初めて来る人の不安を減らす中身は、むしろ医療機関にこそ向いています。
- 受付から診察、会計までの流れ
- 初診の日に持ってくるもの、予約の取り方
- 医師やスタッフが、どんな考えで診療しているか
- 院内の設備や、待合室の様子
撮影では、患者さんの顔やカルテ、受付の画面が映らないように、診療時間外に撮ることをおすすめします。
- 01台本で確かめる撮る前に、体験談・比較・費用の強調・前後写真が入っていないかを台本の段階で見る
- 02書く場所を決める自由診療を扱う回は、内容・費用・リスクを動画のどこに、どう並べるかを先に決める
- 03過去の投稿を見直す今のアカウントに、条件を満たさない投稿が残っていないかを確かめる
- 04迷ったら窓口へ判断に迷う表現は、医療機関を所管する自治体の医療広告の窓口に相談する
厚生労働省は平成29年度から、医療機関のウェブサイトを見回るネットパトロールを実施しています。

焦らなくて大丈夫です。一度、全部の投稿を落ち着いて見直すだけで、だいぶ安心できますから。
医療機関の発信を、HEART CREATIONと
医療機関の動画は、伝えたいことと出せる表現のあいだで、企画を組み直すことが多くなります。HEART CREATIONでは、こんなところからご一緒しています。
- 初めて来る人の不安から、出せる範囲で伝わる企画と台本を一緒に考える
- 患者さんが映らない段取りでの撮影と、編集を同じチームで引き受ける
- 動画から予約の入口や、詳しい説明のページまでをつなげる
表現が医療広告に当たるかの判断は、医療機関の方と、必要に応じて自治体の窓口や専門家と確かめながら進めることになります。まずはご相談ください。

撮影の段取りは任せてください。表現の線引きは、先生と一緒に一つずつ確かめていきましょう。
よくある質問
クリニックのインスタに、患者さんの口コミを載せてもいいですか?
治療の内容や効果についての患者の主観的な体験談は、医療広告として出せないとされています。口コミサイトから転載する場合や、スタッフが代わりに書く場合も違反の例として挙げられています。
歯科医院のSNSで、ホワイトニングのビフォーアフターは載せられますか?
写真の近くに、治療の内容、費用、主なリスクや副作用の詳しい説明をまとめて書けば載せられるとされています。説明がない、足りない、別のページに書いてあるだけ、という場合は違反になります。
医師個人のSNSアカウントも、医療広告ガイドラインの対象ですか?
個人のアカウントでも、医療機関や医師が特定でき、受診を誘う意図がある投稿は対象になるとされています。勤務先や診療内容に触れて受診を勧める投稿は、公式アカウントと同じ考え方で見直してください。
医療広告に当たるか迷ったときは、どこに相談すればいいですか?
医療機関を所管する自治体(都道府県や保健所を設置する市・特別区)の窓口が相談先です。厚生労働省のホームページに、窓口の一覧が載っています。
