お金を払って作ってもらった動画なのに、著作権は制作会社にあるって本当ですか? うちの動画だと思っていました。

本当なんです。でも、使い道を契約に書いておけば、困ることはほとんどないんですよ。
動画を外に頼んだ会社が、あとで戸惑うのはたいてい納品のあとです。広告に回したい、展示会のモニターで流したい、半年後に短く編集し直したい。そのとき「それは契約の範囲外です」と言われて、初めて権利の話に気づきます。
答えは単純で、頼む前に「誰が権利を持つか」と「どこまで使うか」を書面で決めておくことです。権利を丸ごと受け取る形と、使ってよい範囲を決めて許可をもらう形があり、どちらが向くかは使い道で決まります。
この記事では、発注しても権利が自動では移らない理由、譲渡と利用許諾の違い、譲渡にするとき契約書に書いておくこと、使い道の書き出し方を扱います。
この記事の要点
- 料金を払っても、著作権は作った側に生まれる
- 譲渡なら第27条・第28条と人格権の扱いを書く
- 使う媒体・期間・編集の範囲を先に書き出す
頼んで作ってもらっても、権利は自動で移らない
文化庁の「著作権テキスト」は、著作物の創作を他人や他社に委託した場合、料金を払ったかどうかにかかわりなく、実際に創作した受注者側が著作者になると説明しています。発注した会社が納品後に使うには、そのための契約をあらかじめ交わしておく必要がある、とも書かれています。
著作権は、登録などの手続きをしなくても、作った時点で自動的に生まれます(無方式主義)。つまり、何も決めずに頼むと、権利は作った側に残ったまま動画だけが手元に届く形になります。
1本の動画には、権利を持つ人が何人も関わります。
| 動画の中のもの | 権利を持つ人の例 |
|---|---|
| 動画全体(企画・撮影・編集の結果) | 制作会社、監督など |
| 撮影した映像・写真 | 外部のカメラマン |
| イラスト・図解・ロゴの動き | デザイナー |
| BGM・効果音 | 作曲者、音源の権利者 |
| 写っている人の姿 | 出演者本人(著作権とは別の肖像の問題) |
動画は法律上「映画の著作物」に当たることが多く、著作者の決まり方や権利の行き先には特別な規定(第16条・第29条)があります。ただ、発注した会社がどこまでこの規定に当てはまるかは事情によって分かれます。当てはまるかどうかに頼らず、契約で書いておくほうが確かです。
社員が仕事として作った動画は、会社の企画で、職務として作り、会社の名前で公表するなどの条件を満たせば、会社が著作者になります(職務著作、第15条)。外に頼む動画とは、ここが違います。
「譲渡」と「利用許諾」、2つの決め方
権利の決め方は大きく2つです。権利そのものを受け取る譲渡と、権利は制作側に残したまま使ってよい範囲を決めて許可をもらう利用許諾です。
| 譲渡 | 利用許諾 | |
|---|---|---|
| 権利を持つのは | 発注した会社 | 制作会社のまま |
| 発注した会社ができること | 契約で決めた権利の範囲で自由に使う | 決めた媒体・期間・方法の範囲で使う |
| 範囲の外で使いたいとき | 自社で判断できる | 制作会社に相談し、決め直す |
| 向く場面 | 何年も使う・作り直しや展開が多い | 期間や使い道がはっきりしている |
例えば、駅前の美容室が新メニューの紹介動画を3か月だけSNSに出すなら、利用許諾で十分です。反対に、食品メーカーが商品の説明動画を何年も使い、店頭用・広告用・海外向けに作り直していくなら、譲渡で受け取るほうが動きやすくなります。
著作権は分けて譲ることもでき、複製や公衆送信といった権利ごと、期間を限ってといった譲り方もできると文化庁は説明しています。「全部か、何もなしか」で考えなくて大丈夫です。
譲渡にするなら、契約書に書いておく2つのこと
1つ目は、作り直しの権利です。著作権法第61条第2項には、翻案などの権利(第27条)と、作り直したものを使う権利(第28条)は、契約で特に書いていなければ譲った側に残ると推定する決まりがあります。文化庁のテキストは、契約書に「すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と書いておく必要があるとしています。
2つ目は、著作者人格権です。作った人の名前を出すか、勝手に改変されないかといった権利で、本人だけのものなので譲れません(第59条)。そのため、行使しないと約束してもらう例があります。ただし文化庁は、作った側が改変や名前を出さないことに異議を言えなくなる不利益にも触れています。尺を短くする、テロップを差し替えるなど、行う予定の編集を具体的に書いて合意するほうが、お互いに納得しやすくなります。

「全部の著作権を譲渡する」と書いたのに、作り直しの権利は残っているかもしれない。意外と知られていないんですよ。
契約の前に、使い道を書き出す
譲渡でも利用許諾でも、まず自社で使い道を書き出しておくと、話がかみ合います。
| 書き出すこと | 例 |
|---|---|
| 使う場所 | SNSの投稿、広告、自社サイト、店頭モニター、展示会、営業資料 |
| 使う期間 | 期間の定めなし、1年、キャンペーン期間中 |
| 編集の範囲 | 尺を短くする、縦横を変える、テロップや価格の差し替え |
| 受け取るデータ | 完成した動画のみか、編集前の撮影素材も含むか |
| 制作会社の実績掲載 | 載せてよいか、公開日以降か、社名を伏せるか |
| 外部素材の扱い | BGM・写真素材・フォントの使用条件と期間 |
外部素材には特に気をつけます。BGMや写真素材は、制作会社も許可を受けて使っているだけのことが多く、譲渡の契約をしても発注した会社に権利が移るわけではありません。素材ごとの使える期間と範囲を、納品のときに一覧でもらっておきます。

納品後に「広告にも使いたい」と言ったら、追加の契約が要った。後から知ると、泣きたくなる話なんです。
見積もりの段階で元データや二次利用の扱いを確かめる方法は、こちらにまとめています。インフルエンサーに作ってもらった投稿を広告に使う場合は、取り決めの中身が違うので別の記事で扱っています。
あわせて読みたい動画制作の見積書の見方。項目の意味と「一式」の中身の確かめ方 あわせて読みたいタイアップ投稿の二次利用。インフルエンサーの動画を広告に転用するときの取り決め個人のクリエイターに頼むときは、フリーランス・事業者間取引適正化等法(2024年11月1日施行)で、仕事の内容や報酬などの取引条件を書面やメールで示すことが求められています。権利の取り決めも、同じ書面にまとめておくと漏れません。
使い道から決める動画づくりを、HEART CREATIONと
- 企画の段階で、使う場所・期間・編集の範囲を一緒に書き出す
- 再生数ではなく、その先に増やしたい数字を先に決め、広告やLPまで含めた使い道を企画に織り込む
- 企画・撮影・編集・運用を同じチームで受け持ち、使い道が途中で変わっても話を通しやすくする
契約書の文言そのものは、弁護士などの専門家に確認してもらうのが確実です。その手前の「何に使いたいか」の整理から、サービスの一つとしてお手伝いできます。初回のご相談は無料で、オンライン60分でもお受けしています。

動画を作る前に、1年後まで含めた使い道の地図を描く。それだけで、あとの話し合いがぐっと楽になります。
よくある質問
動画制作を依頼したら、著作権は発注した会社のものになりますか?
料金を払っただけでは移りません。実際に作った制作側に生まれるのが基本なので、譲渡を受けるか、使ってよい範囲の許可を契約で決めておきます。
著作権を譲渡してもらえば、動画を自由に編集し直せますか?
作り直しに関わる第27条・第28条の権利が契約書に書かれていないと、制作側に残ると推定されます。著作者人格権も譲れないため、予定している編集の範囲を合わせて取り決めておきます。
契約書を交わさずに納品された動画は、どこまで使えますか?
取り決めがないと、使える範囲は依頼したときのやり取りから考えることになり、食い違いが起きやすくなります。今からでも使い道を書き出して制作側に伝え、書面で確認しておくと安心です。
制作会社が自社の実績として動画を載せるのは、断れますか?
契約で実績掲載の可否や時期を決めておけば、その内容に従います。公開前の商品や社名を出せない案件なら、依頼の段階で伝えておきます。
社員が仕事で撮った動画の著作権は、会社のものですか?
会社の企画で職務として作り、会社の名前で公表するなどの条件を満たせば、会社が著作者になります。契約や就業規則に「社員を著作者とする」定めがあれば、会社は著作者になりません。
