うちは金属の部品を削っているだけの町工場です。そんな動画、見る人なんているんでしょうか。

いますよ。削る、曲げる、磨く。工場の毎日って、外から見ると見せ場の連続なんです。
製造業の会社がショート動画をためらう理由は、だいたい2つです。うちの仕事は地味だから、という思い込み。もう1つは、工場の中には見せてはいけないものが多い、という心配です。
1つ目は、たいてい逆です。社内の人には見慣れた作業でも、外の人は金属が削られる瞬間を見たことがありません。2つ目は正しい心配で、図面や取引先の名前は、気づかないうちに画面の奥に映ります。見せ方を決めることと、映してはいけないものを外すことは、同じ準備の表と裏です。
この記事では、工場の仕事のどこを映すか、部品の用途を言えないときの見せ方、機密が映り込みやすい場所と、撮る前・出す前の確かめ方を書きます。法人向けの会社の話し方そのものは、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい士業・BtoBのショート動画は何を話すか。信用が商品の会社の話し方この記事の要点
- 工場の当たり前は、外の人には見慣れない光景
- 部品の名前を出せなくても、技術は見せられる
- 撮っていい範囲を先に決め、公開前に止めて確かめる
工場の「当たり前」が、いちばんの見せ場
旋盤で金属の棒を削ると、削りくずが渦を巻いて出てきます。プレス機は一瞬で板を形にし、溶接では火花が散り、研磨を重ねた面は鏡のように顔を映します。毎日そこにいる人には背景でも、画面の向こうの人には初めて見る光景です。
| 見せる場面 | 映し方 | 伝わること |
|---|---|---|
| 加工の瞬間 | 刃物や型が当たるところに寄る。音は消さない | 技術の確かさ |
| 材料から製品へ | 同じ位置で、材料・途中・完成を順に並べる | 工程の数と手間 |
| 精度 | 測定器の目盛り、部品同士がすっと組み合う様子 | 品質へのこだわり |
| 職人の手 | 手元だけを寄りで。顔は出さなくてよい | 人の技 |
| 段取りと片付け | 朝の準備、工具が並んだ棚、掃除の行き届いた床 | 仕事の丁寧さ |
見ているのは、発注先を探している購買の担当者だけではありません。取引先の新しい担当者、近所に住む人、この会社で働いてみたいと考える人もいます。加工の様子が分かる動画は、営業資料よりも先に「この会社に頼んで大丈夫か」の答えを出してくれます。働きたい人に向けた発信は、採用のためのSNS運用で扱っています。

削りくずがくるくる出てくるところ、火花がぱっと散るところ。あれは何度見てもテンションが上がるんですよ。
音は消さずに残すのがおすすめです。削る音、プレスの「ガシャン」という音、エアーの抜ける音は、工場の動画らしさそのものです。説明は字幕で入れ、加工の音を主役にしておくと、音なしで見る人にも、音ありで見る人にも伝わります。
部品の名前を言えなくても、技術は見せられる
町工場の仕事では、取引先との約束で、完成品が何か、どこに使われるかを言えないことがよくあります。そこで手が止まる会社は多いのですが、見せる中身を「何を作ったか」から「どう作ったか」に移せば、動画は作れます。
- 自社の練習用の材料や端材、試作の見本で、同じ加工をして見せる
- 加工の技術ごとに1本にする(「細い穴を斜めに開ける」「薄い板を割らずに曲げる」など)
- 材質や加工方法など、一般に知られている言葉の範囲で話す
- 自社製品があれば、それを主役にする
例えば、精密な穴あけが得意な会社なら、取引先の部品ではなく、自社で用意したアルミの板に同じ穴を開け、ピンがすっと通る様子を映します。何の部品かは分からなくても、見る人には精度の高さが伝わります。取引先の名前や用途を出したいときは、必ず先方の了解を取ってからにします。
機密は、画面の奥に映り込む
撮る人は、手元の加工に集中しています。そのぶん、画面の奥や端に何が映っているかは見落とされがちです。工場で映り込みやすいものを並べます。
| 映り込みやすいもの | よくある場所 | 対策 |
|---|---|---|
| 図面・作業指示書 | 機械の横、作業台、壁の掲示 | 撮影の範囲から片付ける |
| 取引先の名前 | 箱のラベル、出荷待ちの棚、ホワイトボード | 撮影の範囲に置かない。向きを変える |
| 加工条件の数値 | 機械の操作画面、近くのパソコン | 画面を消すか、映らない角度で撮る |
| 独自の工夫 | 機械に付けた専用の道具、取り付け方 | 見せてよいかを撮る前に社内で決める |
| 生産の予定や数量 | 工程表、掲示物 | 撮影の範囲から外す |
| 反射 | 磨いた金属面、ガラス、窓 | 寄りの画を確かめ、角度を変える |
| 声 | 背景の会話、社内放送 | 撮影中は取引先の話をしない |
見落としやすいのが反射です。鏡のように磨いた部品は、それ自体が見せ場ですが、表面に工場の奥が映っています。ホワイトボードの文字が、部品の表面に小さく写っていることもあります。

公開してから、部品の表面に取引先の名前が写っていたと気づく。ハロウィンより、よっぽど背筋が凍りますよ。
映り込みは、取引先との約束の問題でもあります。預かった図面や仕様は、契約で秘密にすると決めていることが多く、動画に映れば約束を破ることになりかねません。自社の技術についても、不正競争防止法で営業秘密として守られるには、秘密として管理されていること、事業に役立つこと、公然と知られていないこと、の3つが必要とされています(経済産業省「営業秘密管理指針」)。自分たちの動画で加工のコツを公開すれば、3つ目を自分で崩すことになりかねません。見せる技術と、見せない技術を、撮る前に社内で分けておきます。
撮る前に線を引き、出す前に止めて見る
映り込みは、撮影の当日に気をつけるだけでは防ぎきれません。撮る前と出す前の、両方に手順を置きます。
- 01撮っていい場所を決める工場の中を一緒に歩き、撮影の範囲と撮らない場所を決める
- 02撮影の範囲を片付ける図面・ラベル・画面・掲示物を外すか、向きを変える
- 03普段どおりの安全な姿で撮る保護具や服装、手順は省かない
- 04撮る人も守る動いている機械に近づきすぎない。撮るために安全カバーを外さない
- 05公開前に止めて見る撮った人とは別の人が、一時停止しながら画面の隅まで確かめる
安全の手順を省いた姿が映ると、見る人に指摘されるだけでなく、真似をされるおそれもあります。保護めがねや作業服は、工場の動画では信頼の材料になります。
最後の確認には、取引先との約束を知っている人に入ってもらうのが確実です。営業や品質の担当者なら、ラベルの社名や部品の形を見て「これは出せない」と気づけます。撮影の段取り全体は、こちらの記事にまとめています。
あわせて読みたい動画撮影の準備は何をする?撮影当日までに会社側でそろえることものづくりの現場を伝える動画を、一緒に
工場の動画は、見せ場を選ぶことと、見せないものを外すことを同時に進めます。HEART CREATIONでは、こんなところからご一緒しています。
- 工場を一緒に歩き、撮影の範囲と撮らないものを決める
- 加工の瞬間や精度の見せ方を企画し、撮影・編集まで同じチームで引き受ける
- 見積もりの依頼や問い合わせなど、動画の先の数字を最初に決め、行き先のページまで整える
撮影は全国に出張しています。当社の企業漫画『感動をデザインする』も、町工場の動画づくりを題材にしています。初回のご相談は無料で、オンライン60分でも対応しています(ご相談はこちら)。

工場まで伺って、撮っていい場所を一緒に歩いて決めましょう。そこからが早いんです。
よくある質問
町工場がショート動画で発信する意味はありますか?
あります。加工の様子は、外の人には見る機会のない光景です。発注先を探す担当者や取引先、働きたい人が、営業資料を見る前に会社の技術や仕事ぶりを確かめる材料になります。
取引先から預かった部品を動画に映してもいいですか?
先方の了解がない限り、映さないでください。図面や仕様は、契約で秘密にすると決めていることが多いからです。自社の練習用の材料や試作の見本で、同じ加工をして見せる方法があります。
工場の動画に、職人の顔は出したほうがいいですか?
出さなくても伝わります。手元の寄りだけでも、技術の確かさは十分に見せられます。顔を出す場合は、どこに・いつまで使うかを本人に伝え、了解を取ってから撮ります。
公開したあとで、図面や社名が映っていたと気づいたらどうすればいいですか?
すぐに非公開にし、映っていた内容を社内で確かめます。取引先に関わる情報なら、担当者から先方に連絡します。あわせて、公開前の確認の手順に抜けがなかったかを見直します。
機械の音がうるさいのですが、BGMに差し替えたほうがいいですか?
加工の音は、工場の動画の見せ場の一つです。音は残し、説明は字幕で入れるのがおすすめです。話す声を入れたいときは、機械を止めた場所で別に録ると聞きやすくなります。
